音声指導-1
日本人学習者に英語の音声指導を行う際、どのような点に注意して訓練すべきか
言語音は、有声音と無声音あるいは母音と子音という観点から分類する。母音とは肺から送られてくる呼気は口腔内で摩擦を伴うほどの妨害を受けず、自由に通 り抜けることによって作られる音である。母音を発音するのに大切な音声器官は舌である。しかし、この舌の位置を確定する事は容易でない。例えば、舌の前後 の位置や舌の上下の位置によって母音は分類される。唇の円唇性による分類、舌の動静による分類などがある。学習者に対し、舌の位置を教える事は母音を発音 するためには必要な事であろう。さらに英語の母音は、日本語よりも多い。そのため、日本人の英語学習者は、日本語の母音で英語の母音を代替するために、英 語らしい発音に近づくことができないことが多く、指導上のポイントとして留意しておくと良いだろう。子音は、母音とは異なり、呼気が音 声器官による妨害を受ける事によって作られる音である。子音は一般に次のような3つの基準によって分類される。1)声帯の振動の有無2)調印点3)調印様 式である。喉頭部にある声帯が振動すれば「有声音」になるし、それが振動しなければ「無声音」になる。例えば、[p][b]は調音点も調音様式も同じだ が、声帯の有無によって区別する事ができる。調印点とは発音する際に使う場所の事である。例えば、動く音声器官として唇、舌、軟口蓋、口蓋垂があるがそれ らがどの場所で接触したりどの場所へ接近するかにより異なる音が作られる。例をあげると、上唇と下唇を使う両唇音[p][b][m]や歯茎音の歯茎と舌先 を使う[t][d][s]などである。調音様式で分類するとは、口腔内や喉頭における空気の流れをどのように変えるかによって、同じ調音点でも異なる音に なる事を意味している。例えば、音声器官を狭め、そこを通りぬける気流が摩擦を伴うようにして作る音である摩擦音の[s][z]や、上の歯茎に舌先を完全 に接触させ、呼気が舌の両面から流れるようにして作る音である側音[l]などがある。また、上の前歯と下唇とを接して調音する音である無声唇歯音では [f]、有声唇歯音では[v]の類は日本語にはない。これは英語特有の発音であるため[v]を[v]と発音する傾向があるため気をつける必要がある。ま た、日本語は、原則として、1つの音節が1つの子音と1つの母音との組み合わせからなっているが、英語は子音を連続して発音される「子音連結」がある。例 えばNext station is Osakaでは、下線部分が連結している。また、英語には隣の音の影響を受けて、音が繋がったり、音を発音しなかったり、音が同化する。これらの音の変化 はリスニングの訓練で大きな障害となる。例えば、音の連結の例としてin Americaは日本語では「インアメリカ」であるが、英語の発音だと「イナメーリカ」となる。音の脱落の例としては、don’t knowは「ドントノウ」ではなく「ドウンノウ」となる。音の同化の例は、have to の発音が「ハフトゥ」となる場合である。[v] が[t]に引かれて[f]となるような変化である。ゆっくり話された英語だけを聞いている学習者にとってネイティブのスピードでこれを聞き分けることは難 しい。そのためネイティブの速さに慣れる訓練が必要となってくる。
英語の強勢には語強勢と句強勢、そして文強勢がある。日本語はお経 のように話しても意味が通じるが英語はそうはいかない。例えば“extremely important documents”という句を強弱なしで読まれる事はない。一番強く強勢を置くのはdocumentsでその次はextremely, importantとなる。何が一番重要とされているかをくみ取る事が英語には必要なのである。英語は語の強弱によって意味を変えるからである。強勢のあ る音節は強く、長く、はっきりと、また、逆に強勢のない音節は、弱く、短く、あいまいに発音する。また話し手の感情的状態や態度によって強勢の位置が変わ るため、さらに日本人には理解しにくいのである。日本語の場合、ことばの高い・低いで意味が変わる。例えば「はし」という単語がある。これを「は」を高く 発音すると、地方によって違いはあるものの、ごはんを食べる時の「箸」を意味となる。つぎに、「し」を高く発音すると、「橋」を意味する。また、どこも高 く発音しないと、「端」を意味する。また、日本語の強勢がない部分は声が小さくなるだけではっきりと聞きとりやすい。日本語の特徴は英語と違って音の高低 を重視する。ここが英語を日本語の大きな違いと言えるだろう。これらを打破するためには英語の強勢のルールに気づき、慣れる訓練をしなければならない。
英語の文には抑揚、リズムと呼ばれる音の高低がある。これらの音の高低によって語の意味を変える事にはならないが、話し手の心的態度を表すことができる。 高い音から低い音にしていく下降調や疑問文などに使われる上昇調、また話し手が他に何かを示唆したりする時などは下降上昇調で話される。さらにくわしく述 べると、例えば阿付加疑問文の場合、2種類のイントネーションが考えられる。話し手が内容について確信があり、それに対して聞き手の確認や同意を単に求め る場合は下降調が使われる。例文として、"It’s fine today, [fall]isn't it?"となる。他方、話し手があまり内容について確信がなく、それに対して聞き手の答えを必要とする場合は、上昇調が使われる。例文として "This is expensive, [rise] isn’t it?”となる。日本語には強勢もリズムも英語のような特徴はない。
日本人学習者に英語の音声指導を行う際、以上のような点に気をつける必要がある。
2007/02/12 06:09
音声指導-2
日本人学習者に英語の音声指導(発音,リスニング)を行う際,どのような点に注意して訓練すべきか説明しなさい.
1. 母音
英語には、日本語と同じように独自の音体系が存在する。母音は、口腔内での奥行きや広がりが深くて広い。日本人の英語学習者は、日本語の母音で英語の母音を発音するので、英語にちかい発音が出来ないことが多い。このことにまず留意する。
Ex) 英:apple [pl] 日:apple [あっぷる]
/a/ の発音が英語と日本語では異なる。英語では口を横に広げるが、日本語では口を縦に広げる。このような違いが他にも多々ある。
2. 子音
まず、日本語と英語では子音の調音法が異なる。「し」の発音にも、英語には数種類ある。例えば、SeeとSheでは調音器官が全く異なるが、日本語発音で は[シー]「みる」と[シー]「彼女」は同じところで調音されている。まず、ここを認識させることを留意し、次に英語には「子音連結」と呼ばれる子音の連 続があることに留意する。
「子音連結」は子音の連続を、一続きの音連続として発音するもので、語の語頭、語中、語末に現れる。英語で は、音節の母音の左側に最大3つ、右側に最大4つの「子音連結」が生じる。日本語においては、ア行以外で一つの音節につき一つの母音と子音からなり、英語 にあるような「子音連結」はない。そのために生じるカタカナ発音には、充分に気を配って指導する必要がある。
Ex) scream 英語発音[skri:m]
日本語発音[sukuri:mu] 日本語発音は、子音の後に必ず母音が来ている。このような発音にならないよう、調音法の違いに留意して指導する。
3. 音の変化
日本人英語学習者は、きれいに発音されたものを聞き取っていることが多く、自然な発話にはなれていない。自然な発話には、音が連結したり脱落したりする。 隣の音の影響を受けて繋がって聞こえることを連結といい、綴りには書かれていても発話されていないことを脱落という。また、同じような音に変化する同化と いう現象も見られることがある。これらの現象を踏まえて指導する必要があると考えられる。
Ex) It is not unusual to be loved by anyone. It is not unusual to have fun with anyone,
ここでは、赤字で記してある部分が連結、青字で記してある部分が脱落、下線部が音の同化を表している。このように、通常話されている会話の中で、音の変化は頻繁に起こっている。
4. 強勢
日本語で強勢を置きたいときは声を高くしてあらわすが、英語においては強弱をつけて発音する。日本語は高低型言語であるのに対し、英語は強弱型言語であ る。そのため、強弱による音の変化が見られる。強勢はアクセントとよばれ、語強勢、句強勢、文強勢、がある。高低型言語を話す日本人学習者は、この英語に 見られる強勢を無視してしまい、平板に発音してしまうことがあるので、英語として理解されないケースがある。指導する際は、平坦な発音になっていないか留 意しなければならない。
Ex)日:火曜日までに提出しなさい。「火曜日」が高めに発音される。
英:Hand in this report by :Tuesday. "Tuesday"が強く発音される。
英語のTuesdayを高く読んだとしても、それは強勢とは言わない。英語において強調をしたい場合は、必ずアクセントのある位置に気をつけるよう指導する必要がある。
5. リズム
*英語のリズムは、強勢と抑揚を合わせたものと考えること[Yamauchi]
リズムは、リスニング指導の上で特に注意を払うべき箇所である。リズムの役割は、話者の感情を表したり文の意味を左右したりするといった、聞き取る上で必 要な情報を多く含んでいる。リズムを聞き取れなければ、話者の感情や文の意味が通じないので理解するのに障害が生じる。語、句、節にも一定のリズムや強勢 があるように、文の中でのリズムが非常に重要な学習ポイントである。
Ex) I know(*) it.
"know" に強勢がおかれ、I(私)がどうなのかを説明するキーポイントを表している。この部分を平坦に読んでは感情のない文になるので、どこを強くするかきちんと指導しなければならい。
2007/02/12 06:25
音声指導-3
日本人学習者に英語の音声指導(発音,リスニング)を行う際,どのような点に注意して訓練すべきか説明しなさい.
日本語のア行ア、イ、ウ、エ、オの5つだけは1つの母音のみから成り立っているが、それ以外は、1つの音節が1つの母音と1つの子音との組み合わせで成り 立っている。それゆえ、日本語は、英語に見られるような子音連結は存在しない。また、日本語は、母音の数が5個だけだが、英語は、10個以上である。ま た、子音の場合も同様に日本語と英語の数は違い、日本語は、10個以上であるが、英語は、20個以上である。その上、発音に関しては、母音の場合、口腔内 での使い方が日本語と比べて違う。例えば、日本語のアと英語のappleのaを比較する場合では、口の広げ方が英語のaの方が横広がりで、口の形が違うの で発音の仕方も違う。これらもまた、子音の発音の仕方にもいえることである。例えば、日本語のブと英語のb、vを比較する場合では、調音器官と調音点が違 うことから、全く一緒の音ではない。日本語のブはbには、似ているが、vとは、全く異なった音である。以上のように日本語と英語の母音と子音の違う点を考 慮した上で、訓練するべきである。例えば、日本語に全くない音、/v,θ, ð, r, l, ə, æ/などを特に重点的に練習させる、などである。また、日本語の音節は大部分が母音で終わるが、英語では子音のみで音節が終わるので、母音の前後に、複数 の子音が続くことがある。それゆえ、英語の特徴的な子音連結を身につけるためには、特に、日本語の特徴であるア行以外では、1つの子音と1つの母音である 音のように発音しないように心がけるべきである。要するに、英語を発音する際に、子音の後に余計な母音を入れないよう、発音するように訓練することであ る。
次に、自然な発話においての音の変化についても注意しながら訓練しなければならない。英語の音声変化の中でも、特に、連結、脱落、 同化に注意しなければならない。なぜなら、これは、日本語には、見られない変化だからである。連結とは、put itのように、語尾が子音+語頭が母音のときに起こる音声変化である。また、脱落とは、want to のように同じ音が重なるとき(この場合は、破裂音のtが重なった。)に起こる音声変化である。他にも語尾、語頭に子音と子音が続くとき、破裂音や摩擦音が 続くときと摩擦音と破裂音が重なるときに前の音が省略される。子音と子音が続く例を挙げると、told me やcalled meなどの下線部の音が脱落する場合である。そして、同化とは、did you(did+you)
/dʒd ju/が破裂音である/d/と接近音である/j/が同化の音声変化で/dʒʊ/になり、結果として、/ dɪdʒʊ/と発音する。このようにとなりあった音同士の影響により、どちらかあるいは両方ともに生じる音声変化のことである。以上のように連結、脱落、 同化の3つの点に重点を置き、訓練するべきである。
最後に、英語と日本語の強勢アクセントとリズムが違うので、その点について注意しな がら訓練しなければならない。まず、強勢アクセントについて述べようと思う。強勢とは、音節上におかれる音の強さである。強勢には、語強勢、句強勢、そし て文強勢がある。語強勢は、語の固定した位置にある強勢で、句強勢や文強勢は文脈や話し手の感情に応じてその位置を移動させる強勢である。そして、英語 は、強弱型言語であり、その強勢の場所に強弱をつけて発音する。一方、日本語は、ある箇所を音の高低によって特徴づける高低型言語である。例えば「はし」 という単語がある。これを「は」を高く発音すると、地方によって違いはあるものの、ごはんを食べる時の「箸」を意味する。また、「し」を高く発音すると、 「橋」を意味する。また、どこも高く発音しないと、「端」を意味するといったものだ。この様に日本語は「どこが高いかによって意味が全く変わる特性を持つ 言語」なのである。それゆえ、日本人は、生まれてから今の年令まで、ずっと無意識に「どこが高いか」に耳を澄ましてきたことになる。そういう「高低を聞き 取ろうとする耳」を持つ日本人が、英語を学ぶ上で突然どこも高くない英語を聞いたら、「どこが高いか」と聞き耳を立ててもどこにも注目できないまま、あっ という間に英語は通り過ぎてしまう。その原因は、やはり音の区切り方、拍の違いである。英語は、強勢がほぼ等しい感覚で生じる強勢拍リズム型であるのに対 し、日本語は、フランス語などと同様に、各音節がほぼ同等の長さをもつ音節拍リズムである。音の区切りは、「音節、Syllable」と呼ばれる。これ は、基本的に母音の数で、音節の数が決まる。例えば、英語ではみな一音節の単語も、日本語に入ると母音が挟まれたり、長い母音の/i:/を「イイ」と2つ の音節、2重母音(英語話者にとってはこれで一つの母音)の/ai/ を「アイ」のように2つの音節と解釈するため、英語のstrike は1音節であるが日本語のストライクでは5音節である。他にも、英語のbolt /boult/、speed /spi:d/、strike /straik/が1音節に対し、日本語のボルトは3音節、スピードは4音節、ストライクは5音節である。さらに、日本人のアクセントは、基本的に「高 低」である上に、英語を読むときに、母音のアクセント記号のところで、上げたり下げたりしてしまうと、欧米人には、とっても聞きにくい発音になってしま う。勿論、アクセントが音節にあることが分かっていれば、辞書を使ってその単語のアクセントを覚えていけばそれほど支障はないとも言えるが、一つ一つの単 語が、英語全体のリズムを形成するので、やはり、注意して覚えたいものである。そこで、英語の学習の初期段階は、単語一つ一つのアクセントを徹底的に刷り 込み、次に文全体を読んでいくときの英語のアクセントを刷り込む、という過程を踏むべきである。
これらの日本語と英語の発音の違いなど を訓練させる特に良い方法としては、英語の音楽を聴くことや映画を観ることである。特になまりがあまりない英語の発音のミュージシャンの曲を何度も聴くこ とや、同じ監督の映画をいくつか観ることが好ましい。何回も繰り返すことが重要である。なぜなら、子どもが母語を身につけるとき、同じことを何度でも言 い、同じ言葉遊びを何度も繰り返し、同じ本を何度も読み返し、同じビデオを繰り返えす。これらの繰り返しをすることで自然に学習しているのである。
2007/02/12 06:32
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